クレーム・カスハラ対応における法律の役割

何故、クレーム・カスハラ対応に法律の知識が必要なのでしょうか?

クレーム・カスハラ対応に法律の知識が必要な理由は2つあります。

1つは、クレームがカスハラ(不当クレーム)に当たるか否かの判断は法的判断を伴うものであり、個別具体的なカスハラ対応は、「裁判外交渉」そのものだからです。

もう1つは、法律を知っているという、そのこと自体が「カスハラの予防」に繋がるためです。

今回はクレーム・カスハラ対応における法律の役割について解説します。

クレーム・カスハラ対応に必要な主な法律

まず初めに、クレーム・カスハラ対応に必要な主な法律を説明します。言うまでもなく、下記行為は悪質なカスハラ(不当クレーム)に該当するため、必要に応じて録音を行い、警察への通報も視野に入れます。
あわせて、立証責任は誰にあるか、または管理者などにどの程度の注意義務があるかを把握し、対処します。

1  大声、無言電話による業務妨害→「威力業務妨害罪(刑法234条)」
威力を用いて人の業務を妨害した場合には、威力業務妨害罪が成立します。「威力」というのは人の意思を制圧するに足りる勢力を意味します。大声で怒鳴り続けることや、机を音を立てて叩き続けることも「威力」に該当します。

2 脅されたら→「脅迫罪(刑法222条)」
生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知する脅迫を行った場合には、脅迫罪が成立します。
「土下座をしろ」と言うだけでは脅迫罪は成立しませんが、例えば「土下座をしなければお前をネットにさらすぞ」と発言した場合には、名誉に対して害悪を告知したことになり、脅迫罪が成立する可能性があります。

3 みんなの前で社会的評価を傷つけられたら→「名誉毀損罪(刑法230条)」
嘘か真実かを問わず、公然と事実を摘示し、人の名誉(社会的評価)を毀損した場合には、名誉毀損罪が成立します。
従業員を土下座させた上でその様子を写真・動画に撮り、SNSで拡散したような場合には、名誉毀損罪が成立する可能性があります。

4 脅されて金品をゆすり取られたら→「恐喝罪(刑法249条1項)」
人を恐喝して財物を交付させた場合には、恐喝罪が成立します。「恐喝」とは、財物を交付することを目的として脅迫することをいいます。

5 土下座を強いられたら→「強要罪(刑法223条)」
謝罪の方法は自由なので、人に土下座を強いることは、義務を超えた行動をさせるものであり、強要罪という犯罪となります。
強要罪は、暴行・脅迫を用いて、人に義務の無いことをさせたり、権利を行使することを妨害した場合に成立し、3年以下の懲役刑となる旨が規定されています。

6 退去を要求したにもかかわらず退去しない場合→「不退去罪(刑法130条)」
要求を受けたにもかかわらず店や事業所・事務所などから退去しなかった場合には、不退去罪が成立します。例えば、「お引取りください」などと退去を促したにもかかわらず、退去しない場合には不退去罪に該当します。

法律を知っていることがカスハラを予防する

では、上記のようなカスハラを予防するためにはどうすればいいでしょうか?

前々回のブログで、クレーム・カスハラ対応は、お客様に寄り添う姿勢が大事で、あなたの想い(心構え)が全て身振り・声のトーンといった「非言語」でお客様に伝わることを解説しました。

前々回ブログ「それは本当に悪質なカスハラですか?カスハラに発展しない秘訣。」はこちら

同様に、ほとんどの場合、法律を口に出さなくても、法律で対処できるという自信が非言語で伝わり、相手は踏み込めません。さらに、法律の知識をベースに適切に質問することでカスハラをけん制することができます。

法律を口に出すのは最後の手段 

ここで1つ注意があります。

法律を口に出すのは最後の手段です。というのは、ほとんどのクレームは「感情的なもの」ですが、法律を口に出すということは共感どころか敵対姿勢を見せていることになるからです。最初から敵対姿勢を見せては、火に油を注ぐようなものです。

このため、お客様に寄り添った対応を行い、法律を口に出すのは最後の手段と心得ましょう。

まとめ 

法律の知識はクレーム・カスハラ対応に必要なものです。しかし、法律は知っておかねばならないが、口に出すのは最後の手段になります。

カスハラを予防するためには、マニュアル整備だけでは意味はなく、従業員(顧客対応者)や現場監督者、本社の相談応対者、経営層など、研修により適切なクレーム対応を学ぶことで、大切な従業員を守り、組織の生産性の向上につながります。

※弊社では、マニュアルの見直しや独自メソッドのVRを使ったクレーム交渉力研修も行っております。クレーム・カスハラでお悩みの方は、下記お問い合わせフォームよりお気軽にお問合せください。

https://mentai-thunder.com/contact/

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