特定建設業許可を取得するためには、人的要件や財産的要件など、さまざまな条件をクリアする必要があります。このブログでは、下請け企業が元請け企業に昇格するために必要な対策についてご紹介します。特に、発注者の拡大や経営事項審査対策、資格者対策など、成功への道のりを探っていきましょう。
目次
特定建設業許可とは
特定建設業許可は、発注者から直接受注した工事に関して、下請けに出す金額が建築一式以外の場合は4,500万円以上、建築一式の場合は7,500万円以上の工事について必要となります。
*下請契約金額について、令和5年1月1日より、一式工事は6,000万円だった要件 が7,000万円に、一式工事以外の場合は4,000万円だった要件が4,500万円に引き上げられました。
参考:建設産業・不動産業:建設業の許可とは – 国土交通省 (mlit.go.jp)
特定建設業許可の取得のためには、技術者要件及び財務的基礎要件をクリアする必要があります。
【専任技術者要件】
以下いずれかに該当する者を営業所ごとに配置しなければなりません。
①国土交通大臣が掲げる1級の国家資格者
②一般許可の専任技術者の条件を満たしていることと、許可を受けようとする業種について2年以上、4,500万円以上の工事で指導監督的実務経験があること
③国土交通大臣に①に掲げる者と同等以上の能力を有する者として認定されていること
※②については指定建設業7業種(土・建・電・管・鋼・ほ・園)では認められていないので、①または③で満たす必要があります。
【財産的基礎要件】
以下4点全てを満たす必要があります。
①直前の決算で資本金額が2,000万円以上
②直前の決算で純資産合計が4,000万円以上
③流動比率が75%以上
④欠損の額が資本金の20%を超えないこと
ここまで読まれてハードル高そうと、思われた経営者の皆様、ご安心ください。
入札に参入し、正しい対策を実践すれば、下請けから特定建設業許可をとることができます。
国から発注される公共工事の額はいくらだと思いますか?
答えは約7兆円。
令和5年度の国の公共事業関係費は6兆600億円(対前年度+26億円)で、全国の市町村は1700以上ありますので、自治体もあわせると少なく見積もって約10兆円の予算を一部の建設業者で山分けしていることになります。
参考:前回のブログ「入札制度の概要と25兆円の市場」はこちらをクリック
入札に参入し、元請けとして、利益率20%で単価2,000~3,000万円の工事を8本落札すれば、特定建設業許可の要件である4,000万円を達成可能です。特定建設業許可をとれば受注単価があがるため、さらにあなたのビジネスは加速していきます。
大切なのは、特定建設業許可は通過点に過ぎないという意識と、一年毎にあげるべき利益額を算出し、利益から逆算して考えることです。
以下は、そのために必要な対策となります。
特定建設業許可の取得対策
入札に参入する
結論からいうと、特定建設業許可の取得のためには、入札に参入し元請けになることが近道です。元請けになれば、下請けよりも利益率があがり、行政と直接取引しているということで地域での存在感や信頼性も増します。この信頼性は、対BtoCや対銀行、採用にもいきてきます。下請けのまま、いくらあなたが工事を行っても、実績は元請けのものです。
また、入札工事は前受け金が4割あって、キャッシュフローも安定します。これらによって、特定建設業への道が加速します。
また、下請け工事のとりっぱぐれは、金額によって深刻な影響を与えますが、行政から代金が振り込まれないことはないので、財務が安定します。
入札においては、実績がなくても入札できる案件を探し、まずは実績をつくることが大切です。実績をつくれば、入札できる案件が一気に増えます。
【入札工事に参入するメリット】
・建設工事前受金4割もらえるので資金繰りが楽
・営業努力や広告宣伝は一切不要
・新規開拓や事業の拡大ができる
・下請の会社でも、元請けになることができる
・受注単価が上がり、より高い利益を得ることができる
・仕事の時間配分が自由になり、経営者としての自由度が上がる
・地域の社会課題に貢献することができる
・公共工事の実績ができることでBtoCの直接請負の仕事における営業もしやすくなる
・工事代金のとりっぱぐれがない
・いつでも何らかの仕事があるので本業の閑散期を埋めることができる
目標設定
受注単価、受注件数、入札ランク(受注単価に対応)、決算の数字(経営事項審査の点数等)を設定しましょう。具体的には、どこの(行政)、どの業種の、どのくらいの規模の工事(受注単価、ランク)をいつまでに何件とるなどを設定します。そして、現状との差から対策を考えましょう。
発注者を増やす
特定建設業許可を持つためには、発注者を増やすことが重要です。単に県や市の発注者に頼るのではなく、他市や他県、国の機関にも登録することで、より多くの入札機会を得ることができます。
工事は落札しなければ施工できません。建設会社が少ないエリアでの入札はライバルが少ないので、落札できる確率があがります。広範囲にビジネスを展開し、定期的に入札することで、事業の安定性も向上します。
競合分析
競争の激しい入札市場においては、ライバル分析が重要です。売上、利益、借入金、資格者、過去一年で落札した案件を調査し、「何故勝てるのか」という根拠を手に入れることが競合分析です。
ライバル分析を通じて新たな発注者を開拓したり、ライバルの少ない入札案件を見つけることで、成功の可能性を高めることができます。競合他社の弱点や自社の強みを把握し、効果的な差別化戦略を立てましょう。
登録業種を増やす
専門分野を含む大きな物件をターゲットに入れると入札の範囲が広がります。専門分野でないものは外注にまわすことで対処します。業種区分を増やせば入札できる案件が増えますし、一式工事へと登録を増やせば単価を一気にあげることができます。
建設業許可は業種区分ごとに必要となるので、戦略に応じて建設業許可を行うことが重要です。業種区分を増やすには、該当する業種区分における資格者が必要ですので、有資格者を雇用する、社員の資格取得をサポートする等の資格者対策も必要となります。
入札ランクを上げる
特定建設業許可を取得するには、より受注単価をあげていく必要があります。
入札ランクが上がれば、受注単価もあがって、ライバルも少なくなります。そうすれば、特定建設業許可への道のりが加速します。
入札ランクをあげるためには経営事項審査の点数をあげる必要があります。
経営事項審査対策
経営事項審査とは、成績表のようなもので、入札ランクと対応します。経営事項審査では、財務面の健全性を評価されます。そのため、決算書や分析に注意を払う必要があります。特に、貸借対照表(BS)の項目には注目しましょう。財務の安定性を示すためには、資産や負債の適切な管理やバランスが求められます。
では、どのような決算書がよいかというと、負債が少なく、自己資本比率が40%以上、総資産が圧縮(総資本売上総利益率が高くなる)された筋肉質な決算書です。狙った入札ランクに経営事項審査の点数がいくら不足しているか経営者自ら把握することが大切です。
決算書対策を早期に取り掛かることで、契約保証の枠を拡大することにも繋がります。
資格者対策
特定建設業許可には、人的要件が必要です。資格者の確保と育成が重要なポイントとなります。とはいえ、有資格者はどこでもひっぱりだこです。現場経験が豊富でない方でも、採用後に資格取得のサポートを行うことで、必要な資格を取得できる可能性があります。特に、女性や若者、年配の方々など、多様な人材の活用を考えましょう。社長が音頭を取った社内の研修も有効です。
資格者対策を行うことで、経営事項審査の点数アップにもつながり、資格者が専任で必要となる工事も受注できるため、一石二鳥です。
契約保証対策
契約保証とは、公共工事の契約締結に際し、請負者から発注者に納付される担保のことで契約金額の原則10%以上です。これに際して、保証会社、損害保険会社などの契約保証が必要となります。保証額の上限は、保証会社などの審査に応じたものとなります。
つまり、契約保証の枠で、受注できる工事額の上限が決まります。そこで、契約保証の枠を広げるために、契約保証を出してくれる保険会社の数を増やす、決算書対策により1社あたりの保証額を増やすなどの対策が必要になってきます。
参考:西日本建設業保証株式会社ホームページ
契約保証制度:https://www.wjcs.net/keiyaku/
保証の流れ :https://www.wjcs.net/nagare/
まとめ
特定建設業許可を取得するためには、さまざまな要素を考慮する必要がありますが、大切なのは、一年毎にあげるべき利益額を算出し、利益から逆算して考えることです。そのためには入札に参入し元請けになることが近道です。何故なら入札は自分のペースで進められるため計画が立てやすく、入札ランクがあがれば急カーブでの成長が可能です。また、行政との取引実績による信頼性は、対BtoCや対銀行、採用にもいきてきます。
そして、以上の対策を継続的に実施し、改善と成長を追求してください。特定建設業許可を取得することで、より多くのビジネスチャンスを獲得し、競争力を高めることができます。特定建設業許可は通過点に過ぎません。
入札コンサルタントとして、これからは「あなたが主役」となって、建設業界の企業の成長と地域経済の発展に貢献することを願っています。
※自社が実際入札に参加できるか等、知りたい方はお気軽にお問合せください。
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