前回、入札案件として国や地方自治体から民間企業に毎年発注される金額は約25兆円で、うち中小企業が約7割を受注していることを説明しました。中小企業ベースでは、国等から約5兆円、地方自治体から約12兆円の合計17兆円です。
ただ、自分とは関係ない、入札は難しいという印象があり、中小企業の約1割しか入札市場に参入しておらず、まだまだ参入の余地を多く秘めています。
今回は、中小企業が国等の約5兆円の入札市場に参入するために必要な資格である「全省庁統一資格」について説明します。
前回のブログ「入札制度の概要と25兆円の市場」はこちらをクリック
全省庁統一資格とは
全省庁統一資格は、官公庁の入札に参加するために必要な統一資格制度です。新設の企業や個人事業主も対象です。
統一資格を取得すると、全国の各省庁における物品・役務の製造・販売等に係る一般競争(指名競争)の入札に参加できるようになります。下記のとおり、文房具、清掃、エアコン、草刈り、情報処理等幅広い業種に対応しています。
これにより、複数の官公庁案件に参加する際の手続きや負担を軽減し、中小企業でも参入しやすくなります。入札参加資格の簡素化と効率化により、経営者の方々が本格的に入札に挑戦するチャンスが生まれます。
なお、公共事業の入札には、各省庁が発行する資格が必要です。
【全省庁統一資格が有効となる各省庁】
・衆議院、参議院、国立国会図書館、最高裁判所、会計検査院、内閣官房、内閣法制局、人事院、内閣府本府、宮内庁、公正取引委員会、警察庁、個人情報保護委員会、カジノ管理委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、デジタル庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省及び防衛省で外局及び附属機関その他の機関並びに地方支分部局を含む。
参考:統一資格審査申請・調達情報検索サイト
https://www.chotatujoho.geps.go.jp/va/com/shikaku.html
【参加できる業種】
全省庁統一資格のメリット
全省庁統一資格を取得することには、以下のメリットがあります。
・入札参加の容易化
全省庁統一資格を持つことで、異なる官公庁の案件にも参加できます。複数の案件にアクセスできるため、ビジネスの幅を広げ、受注機会を増やすことができます。広告宣伝しなくても日々数万件の案件が待っています。
・受注単価の向上
全省庁統一資格を取得することで、官公庁案件への参入が可能になります。元請けとなることで、受注単価が上がり、より高い利益を得ることができます。
・信頼性の向上
国と取引していることは、対企業や対金融機関において、会社のブランド力や信頼性が高くなります。
・管理・運用の効率化
全省庁統一資格は統一化された制度により、資格の管理や運用が効率化されます。一度取得すれば、有効期間まで継続的に活用することができ、手続きや管理の手間を削減することができます。
全省庁統一資格の取得方法
全省庁統一資格の取得には、以下の手続きが必要です。
・取得手続きの概要
全省庁統一資格は、申請から入札できるまでに、概ね1か月かかります。申請書類の準備や提出方法などについて理解しておくことが重要です。
・必要な書類と提出方法
登記事項証明書、財務諸表、納税証明書(その3の3)等が取得手続きに必要です。提出方法は、インターネットによる申請のほか、郵送・持参による紙面申請があります。
・審査基準
提出した財務諸表によりA~Dランクに格付けされます。ランクに応じて入札できる単価が違います。例えば物品販売や委託等ではDランクは300万円未満です。ほとんどの中小企業はDランクになりますが、むしろそのほうが有利です。
というのは、ランクを超えて、大企業が入ってこれないからです。また、Dランクは官公庁案件の約半分以上に参加できますが、Aランクの企業はごく少数の大規模プロジェクトにしか参加できません。
・留意点など
全省庁統一資格の取得において、先に添付書類である、登記事項証明書、財務諸表、納税証明書(その3の3)を揃えておくとスムーズです。
また、紙ではなく電子入札する場合は、法人は電子証明書の取得が必要となります。電子証明書の取得は時間がかかるので、帝国データバンク等の対応認証局に、入札資格の申請と同時に申込みましょう。なお、個人事業主はマイナンバーカードがあれば、電子入札できます。
まとめ
全省庁統一資格は、官公庁の入札に参加するために必要な統一資格制度です。新設の企業や個人事業主も対象です。統一資格を取得すると、一つ一つの省庁の入札資格を取ることなく、すべての省庁での入札に参加することができるようになります。
文房具、清掃、エアコン、草刈り、情報処理等幅広い業種に対応しており、下請けから元請けとなることで、受注単価が向上します。また、取引先や金融機関からの信頼性向上にもつながります。
次回は、建設関係の入札について解説していきます。
※自社が実際入札に参加できるか等、知りたい方はお気軽にお問合せください。
この記事へのコメントはありません。