Web3とは何か?(その3)DAOへの誤解

 DAO(ダオ)とは、ブロックチェーン&スマートコントラクトを土台とする分散型自律組織です。

 組織の代表者が存在せず、参加者同士で意思決定されます。この意思決定の仕組みを「ガバナンス」といいます。意思決定に関わるには「ガバナンストークン」という暗号資産(≒株式)を保有する必要があります。

 DAOのガバナンスには次の2つがあります。因みにビットコイン、イーサリアムのDAOはオフチェーンです。つまり、最もブロックチェーンで成功しているDAOは中央集権寄りです。  

 オンチェーンガバナンス   ▶ 意思決定の投票がブロックチェーン上で行われる。非中央集権。               

 オフチェーンガバナンス   ▶  ブロックチェーンの外で様々な利害関係者で議論される。中央集権に近い。

DAOへの誤解

 さきほど、最も成功しているDAOは中央集権寄りだと説明しました。

 え、DAOってみんなで意思決定する組織じゃないの??

 でも、考えてみてください。複雑な技術やリーダーシップが必要な組織が、最初から引っ張っていく管理者がいなかったらどうなると思いますか?きっと、ド素人の集団となると思います。

意思決定の分散とDAOは関係ありません

 実際は、ステージによってDAOの形態は違ってくると思います。DAOの設立当初は中央集権寄りでも、体制が整えば、本来のみんなで意思決定するDAOに近づいていくと思います。

 むしろ、DAOのメリットは次の「貢献度と報酬の明確化」と「資金調達」にあると思います。

 但し、例外があります。それはチャリティに近い、目的がシンプルな場合です。これなら最初から民主主義に近い形ができるかもしれません。

貢献度と報酬の明確化

 従来のトップダウン型の組織では、トップに決定権や利益が集中し、必ずしも貢献度に見合った報酬が分配されているかというと疑問でした。人には欲望がありますし、人が人を評価する以上、仕方がない部分もあるかもしれません。

 ところが、Web3では、ブロックチェーン&スマートコントラクトによって、貢献度が可視化され、予め決められたルールに則り報酬が自動分配される仕組みを構築することが可能です。

 因みに、Web3は民主主義を掲げているため、中央集権であっても開発者や創設者の報酬は低く設定される傾向にあるようです。

DAOによる資金調達

 資金調達は前述した「ガバナンストークン」という暗号資産を発行し、プロジェクト内容に賛同してくれたユーザーや投資家が購入し、調達する仕組みです。

 つまりプロジェクトに参加し、投票権や提案などの権利をユーザーに与える代わりに、資金を調達します。この過程で、クラウドファンディングと同じく認知度の向上も図れます。

 資金調達と認知度の向上

 個人的に、これが一番のDAOのメリットではないかと思います。

※2023.5.2現在、日本では、暗号資産に関する金融規制があるため、当面、暗号資産に該当しないトークン(NFT)による資金調達が主流となると思われます。

関連リンク:金融庁 

https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20230324-2/20230324-2.html#bessi

 以下はDAOの事例です。①は人道活動支援が目的、②は地方創生の意味合いが強いと思います。

①Ukraine(ウクライナ)DAO

 ウクライナに人道活動支援するため、ウクライナ国旗のNFT(エヌエフティ/所有権付デジタルデータ)を販売し、約1週間で約8億円集まり、ウクライナ国防軍に機器を寄付している財団と住民の避難や物資支援を行うNGO等に送られました。

https://www.cnn.co.jp/tech/35184407.html

②山古志DAO

 新潟県山古志村(現長岡市山古志村)という人口わずか800人という限界集落で立ち上がったDAOです。山古志は錦鯉の産地にちなんで「錦鯉(Nishikigoi)NFT」発行しました。このNFTは電子住民票も兼ねており、1万点を1点0.03ETH(イーサ)で販売し、2023年1月現在、約1,000名が「デジタル村民」となりました。

https://kyodonewsprwire.jp/release/202112144913

 ちなみに、ここで資金調達した通貨は何でしょうか?

 それは、イーサリアムベースの暗号資産です。暗号資産、NFTについては、次回詳しく説明します。

DAOのコミュニティ

 さて、DAOはどこでメンバーとコミュニケーションをとるのでしょうか?

 それは、Discord(ディスコード)という無料チャットアプリです。

 Discordとは、2015年にできたアメリカ発のゲーム分野に特化した無料チャットアプリで、DAOのほとんどはDiscordでコミュニケーションをとります。

 理由は、Discordの特徴がDAOと親和性が高いためです。

 ただ、Discordはコミュニティ運営者が権限を保有し、コミュニティメンバーに権限を与えるという点では、中央集権ともいえます。

【Discordの特徴】

1.サーバ単位でコミュニティを構築可能

2. ロール機能による役割分担の設定と可視化

3. Botの活用でコミュニティ内の貢献度を可視化

※音声とテキストの両方でやり取り可能

※会話の履歴が全て確認できて、送信した内容を編集できる

(注意)DMには返事しない。DMは詐欺の可能性がある

https://discord.com/

まとめ

 DAO(ダオ)とは、ブロックチェーン&スマートコントラクトを土台とする分散型自律組織です。意思決定については、まだまだ中央集権寄りと言わざるを得ません。DAOの形態はステージによって違ってくると思います。設立当初は中央集権よりでも形が定まってくれば民主主義に近づくかもしれません。

 また、DAOのコミュニティとして活用されるDiscordも、結局は運営者が権限を有しているため、中央集権は避けられません。

 つまり、現在は本来のDAOを目指している段階ということができます。

 むしろ、現在は、「貢献と報酬の明確化」や「資金調達」にDAOのメリットがあると感じています。

 次回は、暗号資産NFTについて詳しく解説していきたいと思います。

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https://mentai-thunder.com/contact/

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